界隈マーケティングを支援する「KEEN界隈DB」を展開する、KEEN株式会社 Founder&CEOの小倉一葉が、いま注目の「界隈のスターな才能」に迫る対談シリーズ。今回は、"でんぱ組.inc"や"超特急"、"Aぇ! group"など、アイドルを中心に著名なアーティストの楽曲を手がける作曲家・浅野尚志さんをお迎えし、お話を伺いました。聞き手として、KEEN株式会社COO羽田トーマス洸太も同席。Z世代を中心としたファンの熱量が渦巻く「界隈」の現場で、“音楽”という共通言語を通じてファンとクリエイターがどのように関係性を築いているのか。作曲家でありながら、X(旧Twitter)などのSNSやライブ現場でリスナーとの距離感を大切にし続ける浅野さんの「界隈観」からは、界隈マーケティングの未来へのヒントが見えてきます。アイドルカルチャーの裏側から、音楽制作のリアル、そして“愛される作品”の本質まで。界隈を超えて響くストーリーを、ぜひご覧ください。趣味が仕事になった、自然なスタートライントーマス今日はよろしくお願いします。まずは、自己紹介をお願いします。浅野氏音楽プロデューサーの浅野尚志です。作詞作曲編曲など、楽曲提供したり、アーティストと一緒に楽曲を制作しています。 トーマス音楽を志したきっかけはありますか?浅野氏子どもの頃からピアノやギターなど、音楽は身近にありました。とはいえ、最初は趣味としての感覚が強くて、まさか自分が職業作曲家になるとは思っていませんでした。大学生の頃、就職活動をするタイミングで「このまま音楽で食べていけたらいいな」と思い始めて、ちょうどその頃にリミックスコンテストで評価してもらえたことが転機になりました。そのコンテストでヒャダインさん(前山田健一さん)の楽曲をリミックスする機会があり、それが当時の事務所に繋がっていったんです。たまたま、だったかもしれませんが「音楽でいけるかも」という実感を得られた最初の出来事でした。作曲家としての“界隈”との出会いトーマス作曲家の世界も、一種の“界隈”ですよね。自分がその中に入った、と実感した瞬間はありましたか?浅野氏ありますね。作曲家って、世間的には“裏方”というイメージが強いと思うんですが、実際にはけっこう職人的な横のつながりもあって、「この界隈に入ったな」と感じる瞬間があります。最初にコンテスト経由で事務所に入ったときは、まるで新人エンジニアがいち企業にジョインするような感覚でした。先輩たちの仕事の進め方を見て学び、自分でも試行錯誤を重ね、少しずつもらえる仕事が増えていく。自分が界隈に“仲間入りした”と感じたのは、制作した楽曲を、アーティストがパフォーマンスして、それにお金を払ってくれる人がいることを実感した時ですね。「あ、これはもう一員なんだな」と思えた瞬間でした。「王道」と「オルタナティブ」のあいだで浅野氏今のアイドルシーンはいわゆる「王道」が強すぎると感じています。やっぱり“可愛い”が強い。TikTokを中心とした短尺動画文化の影響で、イントロ数秒で掴める曲、サビ前にキャッチーなフレーズがある曲が求められる。テンプレート化してる部分もあります。トーマス浅野さん自身は、そういう王道にどう向き合っているんですか?浅野氏難しいところですね。ただ僕自身は、そうした王道から少しズレたアプローチをするのが好きなんです。いわゆる“オルタナティブ”な要素を入れることで、「この曲、何か違うぞ?」と感じてもらえると嬉しい。もちろん王道のパターンを熟知した上で、それを意図的に崩すようなイメージです。「流行ってるからやる」のではなく、「自分の中で面白いと思えるものを形にしたら、たまたま流行に乗っていた」というのが理想ですね。そのバランスはすごく難しいけれど、試行錯誤を繰り返しています。ファンの空気を読む、界隈の観察者として小倉浅野さんの話を聞いていると、“ファンの空気”をとても大事にしているように思います。曲作りの上で、どう観察しているんですか?浅野氏ライブやSNSを通して、ファンの“気配”を観察するのが日課のようになっています。例えば、ライブでどのタイミングで盛り上がるのか、どんな振り付けで歓声が起こるのか、SNSでどんなフレーズが引用されているのか。そういう“リアルな反応”をヒントにしています。ファン層って、グループごとに全然違うんですよ。いわゆる“アイドルオタク”という言葉では括れない多様性がある。だから、同じように“界隈”という単語を使っても、その文脈は毎回違う。その違いを読み取って、その文脈ごとに響く曲を届ける、という意識は常にありますね。小倉アーティストの界隈も様々あるとは思うんですが、一人一人もまた違うってことじゃないですか。 界隈に所属する方々のそれぞれの界隈とキャラクターが違うと思うので、 それをどのように理解をしようとしてるんですか?例えば、 服とかファッションとか聴いてる音楽とか、そこの匂いというか…そういった感覚でしょうか。浅野氏それで言うとファン層をよく見ています。また、過去の作品も見ていきます。その中から、アーティストが何を目指しているのかが理解できるんです、小倉アーティストとファン層は、 鏡のような関係なのかな?面白いですね。「浅野尚志らしさ」はにじみ出る小倉「浅野さんらしさ」とは、どういったところにあると思いますか?浅野氏うーん…正直、自分ではあまり意識してないんですが、「テンポが速くて、ライブで盛り上がる曲が多い」って言われることが多いですね(笑)。たぶん、無意識のうちに「こういう展開になったら盛り上がるだろうな」と想像してしまうんですよ。幼少期に耳コピしていたクラシックやゲーム音楽やバンドなどの影響もあると思います。結果として、自分の作品にはどこか“高揚感”があるのかもしれません。でも一方で、それが「浅野っぽい」と言われたときに、あまり固定化されすぎるのも怖いなと思っていて。だからこそ、あえてテンプレから外れるような挑戦も続けています。アートとビジネス、そのあいだで揺れている小倉最近は、SNSの影響も大きいですよね。流行や反応が早すぎて、作る側の悩みも深くなっていそうです。浅野氏本当にそうですね。今の楽曲制作って、「どれだけ短時間でバズるか」「どれだけTikTokで踊りたくなるか」が重視されていて、音楽作品や、アーティストにとって何がいちばん大切なんだろうってのを、自分でも見失いそうになってしまうことが多々あります。「作品」としての楽曲と「コンテンツ」としての楽曲の合間で良いバランスを探っていくというのは難しい課題ですね。だからこそ、流行を取り入れながらも「浅野尚志として何を届けるか」を忘れないようにしています。作家自身が自分の中の“熱量”が薄れてしまったら、その曲はたぶん誰にも届かないと思うので。界隈とは「鏡」である小倉最後に、浅野さんにとって「界隈」とはなんでしょう?浅野氏先ほども「鏡」というキーワードが出ましたがその表現が界隈を表現すると考えます。アーティストが発するメッセージに対して、ファンがどう反応するか。それをまたアーティストが感じ取って曲に反映する。その相互作用の連鎖が“界隈”をつくるのだと思います。小倉「浅野くん界隈」と呼ばれることもありますよね。浅野氏それは自分が意図して作ったものというよりは、ファンやアーティストとの関係性の中で自然とできた“現象”なんですよね。そのやりとりがあるから、自分もずっと面白く活動を続けられているのかもしれません。小倉まさに“界隈ジャンプ”が起こる瞬間ですね。浅野氏そう。ひとつの文脈で受け入れられた表現が、別の界隈でも共感を得る。その瞬間に立ち会えるのが、作曲家としてのいちばんの喜びかもしれません。【あとがき】ファンとアーティスト、そして楽曲が相互に作用し、独自の文化を形成していく「界隈」。浅野氏は、その多様性を深く理解し、それぞれの文脈に寄り添った楽曲制作を心がけていることが伝わってきました。彼にとって「界隈」は、単なるファンコミュニティではなく、自身の創作活動の源泉であり、界隈の反応は喜びそのものであるようです。「界隈ジャンプ」という言葉が示すように、彼の音楽が様々な場所で共鳴し、新たな「界隈」との連鎖を生み出していくことが楽しみです。(取材・構成:小倉一葉、羽田トーマス洸太)プロフィール浅野 尚志 氏東京大学工学部卒の作詞家・作曲家・編曲家(1989年生)。幼少期からピアノとヴァイオリンで音楽を学び、学生時代に独学で制作を開始。現在はフリーランスで、でんぱ組.incや、超特急、KinKi Kids、Aぇ! groupなどアイドルソングを中心に幅広く楽曲提供し、キーボードからストリングスアレンジまでワンストップで手がける“オールラウンダー”として知られる。小倉 一葉KEEN株式会社 代表取締役 Founder&CEO。マイクロソフトに入社し、同社ではクラウド(Microsoft Azure)パートナー企業担当のプリセールスSE・BizDevとしてアライアンス業務を担当し、ユーザー会・コミュニティの企画運営に従事。2019年にKEEN株式会社を創業。羽田トーマスKEEN株式会社 執行役員 COO。東京大学工学部を卒業後、東京大学大学院工学系研究科にて修士号を取得。コンサルティングファームのPwCコンサルティング合同会社 Strategy&にて製造業界やIT業界を中心に、多岐にわたるクライアントにコンサルティングサービスを提供。2023年10月にKEEN株式会社に入社。%3Cscript%20charset%3D%22utf-8%22%20type%3D%22text%2Fjavascript%22%20src%3D%22%2F%2Fjs.hsforms.net%2Fforms%2Fembed%2Fv2.js%22%3E%3C%2Fscript%3E%0A%3Cscript%3E%0A%20%20hbspt.forms.create(%7B%0A%20%20%20%20portalId%3A%20%2223387243%22%2C%0A%20%20%20%20formId%3A%20%22f709cb53-5faf-4c4e-93fb-a7fc55682d5a%22%2C%0A%20%20%20%20region%3A%20%22na1%22%0A%20%20%7D)%3B%0A%3C%2Fscript%3E