2024年12月にソフトウェアエンジニアとしてKEENに入社した小川さん。前職ではData&AI領域のクラウドソリューションアーキテクトを担いながら、デベロッパーコミュニティのコミュニティマネージャーとしても活動していました。コミュニティ分析の意義や課題を肌で感じていた小川さんが、KEENではコミュニティ内外の幅広いデータを集約し、可視化することを突き詰めていきます。今回はそんな小川さんに、これまでのキャリアやコミュニティ分析への思いをお話しいただきました。<プロフィール>小川航平岡山県倉敷市出身。高等専門学校で5年間情報工学を学び、筑波大学 情報学群 知識情報・図書館学類に3年次編入学。落合陽一准教授が主宰するデジタルネイチャー研究室でHCIを研究する。筑波大学大学院図書館メディア研究科修了院卒業後は日本マイクロソフト株式会社に入社し、Data&AI領域のクラウドソリューションアーキテクトとして勤務。2023年12月にソフトウェアエンジニアとしてKEEN株式会社に入社。「本気でコミュニティと向き合っている」KEENのビジョンに共感し入社を決意―― まず、小川さんのご経歴を教えてください。高等専門学校で情報工学を学び、卒業後は筑波大学に編入しました。大学ではメディアアーティストの落合陽一さんの研究室に入り、人とコンピュータの相互作用についての研究に取り組みました。大学院まで進学し、卒業後は日本マイクロソフト株式会社にData&AI領域のクラウドソリューションアーキテクトとしてキャリアをスタートさせました。お客様から信頼されるTrusted Advisorとしてクラウドアーキテクチャを中心としたPoCのリードやワークショップの開催、イベント登壇を通して、エンタープライズ企業のお客様に対して開発の知見を提供し、自社のクラウドサービス『Microsoft Azure』をより使いこなせるように技術支援をする仕事です。―― そこからソフトウェアエンジニアとして、KEENに入社を決めたのはなぜでしょうか?一番の決め手はKEENのビジョンやプロダクトと、自身の関心領域が重なっていたことです。前職で、自社の分析ツールを使ってコミュニティの分析やデータの可視化をしたことがあり、『KEEN Manager(キーンマネージャー)』のようにコミュニティデータを可視化することの意義をずっと感じていたんです。事業のプロダクトとして、本気でコミュニティと向き合っている企業と初めて出会い、「これはKEENの時代が来るぞ!」と思いました(笑)。また、ゆくゆくはデベロッパーアドボケイトやデベロッパーエバンジェリストなどの、コミュニティを通した技術の啓蒙活動や技術広報のキャリアにも興味があるので、各コミュニティの課題や在り方を深く知れるKEENでソフトウェアエンジニアを経験しようと決意しました。―― とはいえ、大手の外資系企業からスタートアップへの転職に不安はありませんでしたか?勇気のいる選択ではありましたが、代表取締役の一葉さんが私と同じくマイクロソフト出身だったので、社内のカルチャーやマインドに前職と大きなギャップはないと思い入社を決めました。つねに高いパッションでビジョン達成に向けて推進する一葉さんをサポートしたいという気持ちも入社の後押しをしました。コミュニティを定量的に評価できるKEEN Managerに強く惹かれた―― そもそも、なぜマイクロソフトでコミュニティ活動に取り組んでいたのでしょうか?ソフトウェアに関わらず、様々な"道具"に触れていく中で、道具やその機能が優れているにも関わらず、その存在が知られていなかったり、効果的に使用されていないために、利用可能な価値を十分に享受できない体験をしていることに非常にもったいなさを感じるからです。また、コミュニティ活動が結果的にMicrosoft Azureの利用率を高め、Azureビジネスの規模拡大に貢献できると考えたからです。例えば、デベロッパーコミュニティを通して、まだMicrosoftのお客様ではないユーザの方にサービスを知ってもらう機会を作ったり、既にMicrosoft製品と共にワークライフを送っている方に対してより多くの新しい価値や機能を知ってもらうため、最新のクラウド技術、アーキテクチャの情報をお伝えしたり……。エンジニアに対する技術的な啓蒙活動をコミュニティで行なうことで、未来のAzureファン獲得のための投資をしていたんです。デベロッパーコミュニティは日頃からデベロッパーイベントに参加していたり、コードと向き合っているエンジニア職の人がリードし、相談役としてマーケティングの方がいた方がメンバーが真に求める価値を提供できると考えており、私自身コミュニティ活動への関心が高かったことから、コミュニティマネージャーを務めることになりました。―― 実際にコミュニティマネージャーになってみていかがでしたか?大変でしたね。当時はクラウドソリューションアーキテクトと兼任していたため、とにかく時間がありませんでした。コミュニティ分析をする際に扱う技術自体はそこまで難しくありません。しかし、いざ作りこんだ分析をしようとすると、イベントプラットフォームやSNS、アンケート調査の結果など、さまざまなデータソースを一括で考慮しなければならないために膨大な工数がかかるのです。例えば、アンケートが分析を前提に設計されていないこと、複数のプラットフォームにわたって異なるメールアドレスや名前でアカウントを持つことによる統合の困難さ、そしてイベントハッシュタグが似ているためにSNS上で集めるイベント関連データの蓄積が難しいことなどが挙げられます。また、イベントプラットフォームを活用した上でもイベントに頻繁に参加してくださる方々の詳細な所属やコミュニティ参加日、発信状況を管理して知ることが難しいという課題がありました。アンケートを用いても、多くの回答を得ることの難しさや、それに伴い参加者の多様性を完全に理解することへのハードルがありました。イベント企画の際、私は他のコミュニティではまだ実施されていない、エンジニアが魅力を感じるユニークなイベントの開催を心がけると同時に、常に参加してくださる方々への安定した価値提供も重視していました。このような考えから、自分がリードするコミュニティと、類似する他のコミュニティの特徴や違いをしっかりと理解することの重要性を感じています。この「コミュニティの輪郭」を深く理解することは、参加者一人ひとりに合わせたイベント設計を行い、一度イベントに参加してくださった方をコミュニティのファンに変え、継続的にコミュニティに関心を持っていただく上で非常に重要なステップだと感じました。モノづくりに向きあるエンジニアとは異なり、直接的に多種多様な人と向き合うことはまた違った醍醐味がありました。―― 大変だと感じながらも、コミュニティ活動を続けてこられたのはなぜでしょうか?イベントを設計することの楽しさと立てたイベントページがオープンしてから参加人数が増加するワクワク感、イベント当日の会議チャット、SNSでの盛り上がりが常に励みになっていました。あとは、登壇者への機会提供を行い、「個」としてのバリュー向上に貢献ができることです。コミュニティマネージャーはそもそも人数が少なく、コミュニティマネージャーと接点を持つエンジニアは少ないかと思います。SNS上でレアリティが高い情報発信をされている方やキャリアとして面白い人材、あまりに露出は多くないが、多くの知見をもち、経験を積み重ねている方々への露出機会の提供ができることはやりがいがありました。私自身のキャリアとしても、コミュニティ活動を通して個人の露出を増やし、影響力を高めていきたいという思いもありました。お客様からバイネームで選ばれるソリューションアーキテクトになりたかったからです。そのためには、コミュニティ活動を通じて、自身のビジョンや持っている知識を外に向けて発信し、まずは自身の関心領域や技術スタック、人となりを知ってもらうことが効果的だと考えました。―― エンジニアのコミュニティ活動に貢献できる点と、キャリアアップにつながる点がモチベーションとなっていたのですね。あとは、コミュニティ活動のなかで仮説を立てて検証するプロセスにおもしろさを感じていた面もあります。たとえばイベントで、「誰にどのようなことを話してもらえば一番盛り上がるのか」を企画したり、「どのプラットフォームを使えば最も集客につながるのか」をマーケティングの観点で考えたり。自分の行動がコミュニティにどのような影響を及ぼすのかを考えることが好きだったからこそ、コミュニティデータを可視化することにこだわっていたのかもしれません。一方で、コミュニティ活動の評価を可視化することは難しいことでもあります。どうしても感覚に頼らざるを得ないことも多く……。1つの活動に対して仮説検証するのはわかりやすくても、複数の活動がもたらす結果を総合的に仮説検証するには、コミュニティ内外のデータを一括で管理する必要があります。ただ、コミュニティ全体の評価が可視化されると、コミュニティの成長のポイントもはっきりと見えてきます。だからこそ、コミュニティを定量的に評価できるKEEN Managerに強く惹かれたんです。コミュニティを理想の状態に導くプロダクトへと成長させたい―― 今後、KEENで取り組みたいことはありますか?過去のソフトウェアエンジニアリングの経験、前職のData&AI領域での経験を活かして、生成AIを使ったコミュニティ分析を実現できたらおもしろいですよね。実は最近、ChatGPTに関する本を大学の先生と執筆していて、AIで生活スタイルや意思決定、知識獲得の過程とスピードがどう変化するのか、AIがグループダイナミクス的にどのように作用するのかにこれまで以上に関心が高まっているんです。KEEN Managerのようにデータを扱うプロダクトは、最先端のAI技術を取り入れやすい傾向があります。製品版をリリースしたばかりの今だからこそ、新しい技術を取り入れた機能の提案に積極的に挑戦していきたいです。最終的にはKEEN Managerを、「コミュニティを理想の状態に導くためのロードマップを描き、目標達成をサポートできるプロダクト」へと成長させたいですね。そのためにも、コミュニティ内のデータに限らず、端末やSNSなどさまざまなところに散らばるデータを集約し、可視化することを突き詰めていきたいです。採用情報はこちらから