界隈マーケティングを支援する「KEEN界隈DB」を展開する、KEEN株式会社 Founder&CEOの小倉一葉が、いま注目の「界隈のスターな才能」に迫る対談シリーズ。今回は、X(旧Twitter)で話題を集める“薄肌界隈”から、「薄肌友の会」管理人・いちさんをお迎えしました。コミュニティ「薄肌友の会」立ち上げの背景小倉 さっそくですが、「薄肌友の会」を立ち上げられたきっかけや原動力は何だったのでしょうか。いち氏 私自身が肌が薄いことで悩みを抱えていたんです。ちょっとした刺激で赤くなったり、10代から小じわや色むらが目立っていたり、ピーリングが合わないとか。周りに同じような人がいなくて、情報交換もままならない状態でした。医学的にははっきりした定義がないので、カジュアルに発信している人も少なかったんです。でも自分の肌は確実に薄くて困っている。そんなとき、「X(旧Twitter)で同じ特徴を持つ人とつながれたら、少しは気が楽になるんじゃないか」と思ったのが始まりですね。純粋に「お友達になりたい」という気持ちでした。小倉 もともと、いちさんは美容業界にも関わっていたのですよね。いち氏 はい。最初は広告やCRM関係の仕事をしていて、デザイナーをしたり化粧品のマーケティング会社にいたり、美容皮膚科のクリニック本部でも働いたり…。そういう経歴で美容の知識を学びつつも、自分の“薄肌”問題を本格的に振り返ることはなかったんです。出産してから「このままじゃいけない」と思ってSNSを始めたら、気づけば3.9万人のフォロワーさんがついてくださいました。小倉 それが薄肌コミュニティ誕生のきっかけになったわけですね。いち氏 はい。最初は「私みたいな人は他にいないかな?」くらいの気持ちでしたが、同じ悩みを持つ方って実は相当数いらっしゃったんですね。「私も薄肌かも」と言う人が増えてきて、これはいっそコミュニティ化したほうが情報交換が活発になるだろう、と。「友の会」ならではの急拡大と混乱小倉「薄肌友の会」コミュニティを立ち上げた途端に、すさまじい勢いで会員が増えたと聞きました。具体的にはどんな感じだったんでしょう?いち氏 2日で2万人、あっという間に5万人という感じで、私がまったく拡散を意識しなくても急激に増えました。SNSのアルゴリズムが関係していたのだと思います。私としては想定外でしたね。嬉しい反面、まったく制御がきかなくなってしまって…。「薄肌じゃないのに、このコミュニティが表示されて邪魔」とか、「そもそも薄肌って何?意味が分からない」みたいな意見がSNS上で溢れちゃったんです。でもコミュニティ自体は個別にブロックができなかったり、X(旧Twitter)の仕組み上どうにもならなくて…。開発チームに問い合わせてもすぐに対応は難しいとのことで、一時期は私のところに不満が殺到しました。小倉コミュニティの運営者としては大変な出来事でしたよね。一方で「ようやく自分と同じ悩みを共有できる場が見つかった」と喜ぶ人も多かったのでは?いち氏 そうですね。「救われた」という声のほうが圧倒的に多くて。「薄肌に気づけてスキンケア選びが良くなった」とか「悩みが少し軽くなった」という感謝の声もあり、そういったメッセージが届くたびに、運営を続けようという気持ちになりましたね。「友の会」を成り立たせるためのコミュニティルールづくり小倉 コミュニティ名が“友の会”になったのには、どんな思いがあったのでしょう。いち氏 SNSの美容界隈って、どうしてもギスギスしがちなんですよ。ステマ疑惑が起きたり、知らない人同士が煽り合ったり。でも、私が運営するならステマも炎上もない“安心できる美容の場”にしたいと思ったんです。そこで、あえて“友の会”という名前にしました。育児や仕事で忙しい毎日の中で、美容は心と身体を慰めてくれるものだと思っています。化粧品を丁寧に塗る時間が私の癒しなんです。朝起きて肌が少しきれいになっている、それだけで頑張れる。だからこそ、辛い気持ちをさらにぶつけ合うより、穏やかに共有・共感したいっていうのが私の願いなんです。小倉 “友の会”という名前、そこにそんな願いが込められてたんですね。実際に利用者が急増すると、肌荒れなど深刻な悩みを投稿する人も増えそうです。そこはどう運営したのでしょう?いち氏専門家ではない方からの医療アドバイスが飛び交ってしまったり、「肌のセンシティブな画像を見たくない」と反発されたりして…。最終的に「肌トラブルは責任が取れないのでNG」「メイクや化粧品の使用感相談はOK」といった形でハッシュタグ分けを導入したり、段階的に整備していって、かなり落ち着きました。これも、他のコミュニティに参加してる会員さんからハッシュタグ制があると整備できていいですよ、とアドバイスをいただき、導入することができました。自分ひとりでは良いアイデアが浮かばなかったので、本当にありがたかったですね。もちろん完璧ではありませんが、「これは医療機関の範囲」「これは単純に化粧品の使用感の話」など、皆さんが区別しやすくなったと思います。あと私としては“友の会”という名前をつけた以上、議論や口論ではなく穏やかな雑談を目指しているので、“ギスギス禁止”という空気感は常に大切にしています。運営を続けるうえでの原動力小倉コミュニティ管理をしていると、どうしても苦情対応や仲裁など大変な面が出てきますよね。いちさんのモチベーションを支えているのは何でしょうか?いち氏 最初の頃は正直辛かったですね。ボランティアで始めたコミュニティでのトラブルも、私が謝罪をしなければならない。でもやはり「薄肌を知って助かった」という声が定期的に届いて、それがすごく嬉しくて。また、子どもが元気ならそれでいい、SNSでの批判はそこまで優先順位を上げなくてもいいかな、って思えるようになって。そう考えたらだいぶ楽になりました。小倉 ご家族をはじめ周りのサポートも大切ですね。いち氏 本当にそうですね。ときには夫や実家に子どもを預けてイベントに出かけたり、寝かしつけが終わったらSNSをチェックしたり。そういう生活リズムに慣れてきたこともあって、今は比較的落ち着いて運営できています。メディアサイト立ち上げと今後の展望小倉 コミュニティ運営に加えて、新たに「薄肌友の会メディアサイト」も立ち上げられました。その目的はどういったところにあるのでしょう?いち氏 SNSだと投稿がすぐ流れるので、企業との座談会やイベントレポートを残す場所がほしかったんです。また、中学生やご年配の方でXを使っていない人に向けても情報を届けたいという思いがあり、広く「薄肌」という言葉を広く知ってもらうためにもサイトが必要だなと思いました。小倉 具体的に、どんなコンテンツを載せようと考えていますか?いち氏 まずはコミュニティ主催の座談会レポートですね。ロート製薬さんや資生堂さん、ローラメルシエさんなど、さまざまな企業さんとコラボして座談会を開いたのですが、それがすごく有意義だったんですよ。でもSNS上だと埋もれてしまうので、きちんとアーカイブして誰でも見られる形にしたい。あと今後は会員さんからの寄稿記事や、実際の肌の写真を使ったビフォーアフターなども検討しています。小倉 公開してすぐ、大手企業さんからお声がかかったそうですね。いち氏 はい。大手紙製品メーカーさんが「うちの商品が薄肌の方に合うのでは」というお話があって、会員にプレゼントして感想を集める企画を進めています。実際に使った方の率直な声を聞いてメーカーさんにフィードバックできるので、実直なユーザーの声がフィードバックされる仕組みは面白いですよね。企業コラボと「薄肌」という市場の可能性小倉 企業さんからのアプローチが増える中で、いちさんとしてはどんなスタンスで臨んでいますか?いち氏 あくまで「会員ファースト」です。例えば企業さんから「新商品を宣伝してください」と言われても、会員さんが「このコスメめちゃくちゃ良かった」と言っていたり、私自身が本当に使って納得しているものじゃないと、単なるPRにはしたくないですね。逆に、会員さんから「このブランドめちゃくちゃ良かった」という話が自然発生している場合は、企業さんにお声がけして連携を深めることもあります。やはり“友の会”ですから。小倉 将来的に、いちさん自身のブランドや商品を作る構想などはありますか?いち氏 今のところはそこまでは考えておりません。だけど「薄肌」という概念自体がもっと広がれば、いずれは商品開発や専門ブランドもあり得るかもしれません。今はまず、このコミュニティを守り育てることを大事にしています。「オンライン上の公園」を目指すコミュニティ運営小倉 最後に、コミュニティを今後どのように発展させたいか、ビジョンを教えてください。いち氏 私は「オンライン上の公園」だと思っているんです。公園って、利用者が増えるほどゴミや騒音など問題も起こるけど、管理人が整備やルールをきちんと作れば、多くの人が気持ちよく過ごせる場所になりますよね。それと同じで、私がきちんと“掃除”すれば、みんなが楽しく穏やかに交流できるはずと考えています。小倉コミュニティをうまく盛り上げていくために大事にされていらっしゃる、意識されていることはありますかいち氏 そうですね、「会員さんを信じる」ことですね。皆さん思いがあるからこそぶつかりあってしまったとしても、モヤモヤしてる気持ちをちゃんと管理人として言葉に変えて提案をすれば、きっと皆さん建設的な意見を出してくださるし、仲良くなれるようになっていくと信じています。だからこそ、管理人としては、どっしりと構えて、前向きに捉えるようにしています。小倉 なるほど、当事者としていながらも、管理人としてはどっしりと構えてらっしゃるんですね。いち氏 はい。最近は、既存の会員さんが新しく入ってきた方に対して優しく誘導してくれるんです。私一人で全て見るのは限界がありますが、会員さん同士が助け合ってくれているおかげでうまく回っています。小倉最後に、いちさんがこれからやっていきたいこと、挑戦してみたいことがあれば教えてください。いち氏将来的には、地域ごとのオフラインイベントや、企業との商品開発なんかもできたら素敵ですよね。その時も私単独ではなく、有志の会員さんに協力してもらって、リアルでも“友の会”が広がっていったら素敵だなと思います。あと、個人としては「炭酸がすごい」ってことですね。いろんな商品や成分を試してきたんですが、炭酸が一番肌に合いやすくて、年齢や肌質を問わずに勧められる数少ない存在だと感じています。「自分の肌に合うものを、正しく伝える」っていうことを、これからも大事にしていきたい。広告としてじゃなく、生活者としてのリアルな実感として伝えたいです。小倉まさに「薄肌友の会」で大切にされている、“生活から生まれる言葉”ですね。いちはい。最初は「私の悩みをわかってほしい」という一歩でしたが、今では「自分と同じように悩む誰かが、一歩軽くなれるように」と願いながら活動しています。「薄肌」と聞いてピンと来る人が増えてくれたら、敏感肌みたいに一つの当たり前の概念になると思うんです。少しでも多くの人に「薄肌」という概念やコミュニティを知っていただけたら嬉しいです。【あとがき】肌が薄いことに長く悩んだ末、同じ境遇の仲間と支え合う場所を作りたい——。そんな純粋ないちさんの悩みから始まった「薄肌友の会」は、今やコスメ好きの間で一大「薄肌界隈」を形成しています。その成長は、いちさんの温かい人柄と、コミュニティを大切に思う気持ちに支えられています。急激な拡大で混乱もあったが、「誰かの役に立てるのなら」という前向きな姿勢と、“友の会”というやわらかなルールづくりが、多くの人を包み込んでいます。(取材・構成:小倉)プロフィールいち氏X上のコミュニティ「薄肌友の会」管理人。美容領域、デザイナー、IT業界など幅広いキャリアを経て、現在は育児をしながらSNSで美容情報を発信中。小倉 一葉マイクロソフトに入社し、同社ではクラウド(Microsoft Azure)パートナー企業担当のプリセールスSE・BizDevとしてアライアンス業務を担当し、ユーザー会・コミュニティの企画運営に従事。2019年にKEEN株式会社を創業。%3Cscript%20charset%3D%22utf-8%22%20type%3D%22text%2Fjavascript%22%20src%3D%22%2F%2Fjs.hsforms.net%2Fforms%2Fembed%2Fv2.js%22%3E%3C%2Fscript%3E%0A%3Cscript%3E%0A%20%20hbspt.forms.create(%7B%0A%20%20%20%20portalId%3A%20%2223387243%22%2C%0A%20%20%20%20formId%3A%20%22f709cb53-5faf-4c4e-93fb-a7fc55682d5a%22%2C%0A%20%20%20%20region%3A%20%22na1%22%0A%20%20%7D)%3B%0A%3C%2Fscript%3E