本記事は、KEENのCEOである小倉一葉、COOである羽田Thomas洸太へのインタビュー記事です。KEENの創業からの5年の歩みを振り返り、コミュニティ支援を中心とした事業からスタートアップへのチャレンジ、現No.2であるThomasのジョイン、そして現在のコミュニティ業界におけるKEENの立ち位置とこれからについて語りました。創業時から今日までのKEENの歩み ――― KEENの今日の事業内容や組織体制に至るまでの歩みを振り返って教えてください。Kazuha:KEEN(前社名:プリズムテック)は創業期より、「コミュニティ」の支援を実施しております。創業当初は、企業様のコミュニティマネジメントの支援をハンズオンで行っていました。コミュニティの立上げ支援、イベントの実施サポート、SNSやコミュニティポータル内での発信などを通したコミュニティネットワークの強化などの活動をお手伝いさせていただいていました。お客様企業のコミュニティマネージャーさんをサポートしながら、我々自身もコミュニティマネージャーのような働きをさせて頂く。『お客様のお客様である「コミュニティにいる人たち」を大切にする』という重要な価値観がこの時から今のKEENまで受け継がれています。一方、スタートアップという観点では、当時は様々なトライ&エラーの日々でした。属人的な直接支援から脱却し、非線形の成長を実現するべく、どの様に経営方針を変えていくか模索しておりました。サービスのモックアップを何個も作っては壊して、というのを繰り返す日々が長く続きました。転機となったのは、私と創業メンバーのライフステージの変化です。創業期のメンバーは女性が多かったのですが、嬉しいことに同じタイミングで出産を迎える事になりました。ライフステージの変化と会社経営の両立の難しさにぶつかる中でも、絶対に会社をたたむという選択はしたくなかった。「最後の最後」という想いで、自分たちには何が出来るか自問自答し、たどり着いたのが「コミュニティマネージャーに蓄積された属人的な情報をソフトウェアに落とし込めないか」というアイデアでした。これが、現在のKEEN Managerの原点になっています。以降、社名をKEENに変更し、ソフトウェア事業とコミュニティの直接支援の2つの事業の柱を走らせてきました。スタートアップとしての成長を目指し、投資家の方々には、この事業の可能性を信じてもらい資金調達する必要がありまがありました。しかし、この時フルタイムの社員は私一人しかいない状況だったんです。そんな当時、ピッチを作ったり、事業を精緻化したり、などさまざまなサポートをしてくれたのが友人であり、現在のCOOであるThomasでした。Thomasとは大学時代バンドサークル時代の仲間で、渋谷のバンドスタジオで出会い、以降13年の仲になります。最初の方は業務委託というより、友人としての壁打ちやサポートをしてくれました。――― Thomasさんがフルタイムメンバーとしてジョインしたのは、KEENにおけるどのようなフェーズだったのでしょうか。また、Thomasさんご自身の目線で、KEENにジョインするきっかけや当時の具体的なエピソードがあればお聞かせください。Thomas:ここからチームも事業も拡大していこうというフェーズ、『KEENの拡大期』のタイミングに、フルタイムメンバーとしては3番目の社員としてジョインしました。ジョインするきっかけとしては、人生でも数えるくらいの良き友人として起業した時から、ずっとKazuhaさんのことを応援していて、先ほどもあった通りコミュニティビジネスについての話をお酒の席などでよくしていました。そして、スタートアップとして加速していく際に、市場規模の算出方法などのディスカッションに乗るようになっていました。そんな第三者的な関わり方の中で、「もっと積極的にKEENに関わりたい」と思っていたところ、チームにジョインしないか、とお声がけをいただいたのがきっかけですね。またちょうどその時、自分も新しい働き方を模索していたタイミングでした。私は前職でPwCコンサルティングの戦略コンサルティングに6年弱従事していました。大企業の戦略を策定することに自分の頭とエネルギーをすべて使った5年間と、機会をいただいて出向を1年間経験しました。コンサルティングも出向もとてもいい経験で、自分をものすごく成長させてくれて、とても素晴らしい仲間にも出会えました。しかし、実際に実務をやるキャリアに興味がでてきていました。このタイミングでKEENにお誘いいただいたのがジョインする1つの大きな要因でした。事業ドメインとして、コミュニティビジネスもかなり面白いと思っていたこともあり、飛び込みましたね。Kazuha:私とThomasが出会ったバンドサークルは言わば、お祭りを自分で作っていく人の集まりでした。最高の演奏をし、最高のステージを作って、仲間をどんどん集めていく・・・サークルのメンバーはもちろん、来てくださる方々、お客様や友達、家族などの人に自分がやっていることを届けたいという想いやエゴでやっています。選ぶ曲も、自分が応援したいものや、良いと思うものを伝えたいという気持ちがものすごく強いです。また、私たちのバンドサークルは特に厳しい実力至上主義であったので、相当な努力をしないとステージに立てませんでした。夏合宿の時には、ほとんど寝ずにハードなスケジュールで練習していました。振り返ってみると、この二つの要素をあわせ持っていたバンドサークルは、いわゆるベンチャーの精神があったと思います。今でもバンドサークルで大事にしていたことや、当時は言語化できていなかったカルチャーなどをThomasとよく語り合っていて、あの価値観を会社にも適用していきたいよね、などの会話をしますね(笑)Thomas:自然と、バンドサークルのバイオリズムがKEENに引き継がれているところが多々ありますよね。現在のコミュニティ業界の課題とKEENが提供する独自の価値――― KEENがコミュニティの業界内で提供している独自のバリュー、現在のコミュ二ティというドメインにおける大きな課題、業界におけるポジショニングなどの話について、お二人の考えをお伺いさせてください。Kazuha:コミュニティはホモサピエンスが営みを始めるときから存在していた、DNAに刻みこまれているようなツールです。我々は、それを資本主義のフレームワークの中で、事業の成長や個人の成長のためのレバーとして使っていこうとチャレンジをしている状況です。例えば、村や地域のコミュニティ、我々が出会ったサークル、SNS上のコミュニティなど昔から様々なコミュニティがある意味、自治会的に営まれるものでした。そんな金銭の報酬があまり発生してこなかった営みを、現代の資本主義社会におけるビジネスの世界に接続しようとチャレンジしています。このチャレンジをするのは、テクノロジーの発達やSNSの普及が広がった今だからこそ意義があると思っています。コミュニティは自分が好きなこと、自分の感情や価値観として大事にしていることを共有する場であり、自分の信念に基づくものに手を入れることができる場です。皆さんがそれぞれ能動的に、自分の思いを持って集っていく場であるからこそ、コミュニティはビジネスの文脈では新たな場になります。我々はそのコミュニティという場をベースとした行動のデータを集約することによって、実はその個人がまだ気づいていなかった本来の才能や、行動の傾向を発見し、コミュニティにおける個人の活躍がより一層加速するような仕組みを作りたい。KEEN Managerは、ビジネスの世界における「コミュニティ」という新しい場を、データに基づきダイナミクスを可視化し、よりベターな活動を実現するインフラを提供することを目指しています。Thomas:コミュニティは遥か昔からあるなかで、ビジネスに使おうという発想がでてきたのは1番遡ってもインターネットが発明された1950年代。さらにコミュニティが本当にビジネス、マーケティングの加速に使えるとなってきたのはここ5年、10年の話です。コミュニティが人間にとって自然なものでありすぎるが故に、資本主義のツールとして認識されるのは盲点だったのでしょう。また、コミュニティをやろうという人は、かなり増えてきてはいるのですが、なぜコミュニティをやるのか、それによってビジネスをどう加速させていくのかを本当の意味で言語化して実践できている人はまだまだ少ないのではないかと思っています。このような人たちがコミュニティを使う上で、「資本主義に傾倒しすぎて、個人に対し制限をかけることがないように」、また、「仲良くお話をしてイベントをやっておしまい、とならずに事業に貢献できるように」、上手くバランスが取れるように我々がサポートしたいです。Kazuha:会社での自分、家族との自分、友人関係での自分のように、コミュニティによって、自分の姿、見せる部分が変わっていくからこそ、新たなチャレンジをしたい時にコミュニティはとてもいい場所です。テクノロジーが発達し、インターネットやSNSが普及していて、誰もがコミュニティにアクセスできる今、我々のチャレンジの土壌は整っていると思っています。――― コミュニティの業界の中で独自のチャレンジを続けるKEENという組織はどういったような組織、言い換えるとどのような社風やカルチャーの会社なのでしょうか?Kazuha:コミュニティマーケティングの支援の事業をやっている会社ですので、コミュニティラバー(Community Lover)が集まっています。ただ、コミュニティラバーであることと、コミュニティマネージャーであることは、異なっていています。今のKEENはメンバー全員がコミュニティマネージャーというわけではありません。プロダクトチーム、カスタマーサービス、 セールスのメンバー、マーケティングのメンバーなど全員が、コミュニティのグロースや成功を支援することにものすごくパッションを持っていることがKEENの魅力で独自性だと思っています。コンサルや航空会社など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが集まって人生の大事な時間をコミュニティのサクセスのために捧げ、業務をしてくれていることを私は誇りに思っています。KEENの新たな未来へ――― 新たなチャレンジを続けるにあたって、どういった仲間を求めているのか、どういった人と一緒に働きたいか、について教えてください。Kazuha:やはりスタートアップは、誰もやってないことにチャレンジする場所です。なので「チャレンジしたい」と踏み出せる人と一緒に仕事したいですね。Thomas:根っからのチャレンジャー、逆境に身を置き続けることだけが楽しみという冒険家を想定しているわけではありません。「怖い、辛い、自分にできるかわからない、だけど、それでも自分の可能性を信じてチャレンジしてみたい」と思い、踏み出せるような人をKEENは求めていますね。――― KEENがこの先、実現していきたい世界観、そこに至る為の直近でKEENが目指してる目標などはありますかKazuha:今までは、KEENはBtoBで法人に対して販売等を行っているような企業をターゲットとしてやっていました。その為、KEENMangerを、ITソフトウェア企業でコミュニティにチャレンジしてるお客様たち全員に使ってもらいたいという野望を持っています。また、KEENは現在新しいチャレンジを始めています。toCの商材、例えば、化粧品、アパレル、さらに私もすごく大好きなお酒、などのような商材において、ファンマーケティングやインフルエンサーマーケティングのような影響力がある人たちから派生した購買に対しての影響力の波を測定することがKEENにはできると自負しているので、そちらの事業検証にチャレンジしています。 これはソーシャルリスニングと近しい領域ではあり、この市場はすでに上場企業が何社もあり、グローバルでもツールがあって事業として証明はされています。加えて、この文脈で弊社の強みである「複数のコミュニティプラットフォームの場におけるデータを集計し、 クレンジングし、最終的に示唆を提供する」という価値を付加できるのではないかと考えています。この構想を実現できるプロダクトは、現在、国内で認識しているところではありません。単一のプラットフォームではなくて、複数のプラットフォームからお客様の影響力を把握し、データに基づく示唆を提供するというのは、面白いチャレンジになると考えていますし、この領域で、天下を取りたいと考えています。