語り手:KEEN株式会社 Founder&CEO 小倉一葉現在の企業経営における最大の課題のひとつは、人的リソースの確保です。ベンチャーやスタートアップ、中小企業などは採用難に直面し、フリーランスや業務委託などを駆使して対処しています。大企業でも人的資本の開示に取り組むなど、社員のスキルを資本ととらえ、その管理・育成に力を入れています。労働人口がどんどん減ってゆく現在の日本において、人的リソースの価値のありかたは、どんどん変化しています。そして企業も、その変化に合わせて、人的リソースについての考えを更新してゆかなくてはなりません。今後わたしたちは、どのようにして人の才能を発掘し、それを伸ばしてゆけばよいのでしょうか。KEENは、そのひとつの鍵となるのが「コミュニティ」という概念のアップデートであると考えています。タイパ時代の人材育成人的リソースの問題のひとつは、入ってくる人材をいかに育成するかです。私自身は秋田の出身で、今思えば地元ではパワハラ的な教育を受けて成長してきました。たとえばスキーの練習で、急斜面を直滑降しろと言われたり。もちろん、スピードに慣れるためのトレーニングですが、それができて、チームの一員として認められる、みたいな感じです。でも大学で東京に出てきて、女子大という環境もあるからか、ぐっと周囲が優しくなりました。いきなり「女の子」扱いされるようになって、温室に入ったような感覚でした。もちろんパワハラ的なものが無くなったのは好ましいことなのですが、しかし同時に、外圧のようなものがなくなって、私は目標を見失ってしまったんです。何をやればいいのか、何を目指せばいいのか、急にわからなくなってしまった。これはまさしく、人材育成の問題における両極だと思います。一方には、暴力的なイニシエーションによる強制的な成長がある。もう一方には、ゆとり教育的な空間があって、そこではパワハラがないかわりに、明確な指針もない。そこで頭角を現すことができるのは、もともと秀でた才能がある人だけです。もちろん、企業はなんらかのかたちで社員を教育しなくてはなりません。しかしそのことが、いま非常に難しくなっている。たとえば1日100件テレアポをやらせるといった旧態依然とした方法は「無駄な努力」となり、現在はもっとコスパよくタイパよくクリアするという発想が当たり前になってきています。これからの人材育成で求められるリーダーシップ像は、ムチを持ってビシバシ叩きながら組織を引っ張るようなマネージャーでは、もはやありません。メンバーに自発的に動いてもらえるような仕組みやコミュニケーション手段の構築、これが現在の人的リソースにおける課題のひとつです。コミュニティの外縁を再定義する人的リソースのもうひとつの問題は、そもそも人材をいかにして確保するかです。前回の記事でも説明したように、わたしたちが提供するKEEN Managerでは、コミュニティ内のメンバーを「スター」から「サイレント」まで6段階に分類しています。KEEN Manager の特徴は、行動ベースでのデータに基づいた分析です。各メンバーが、どういう経歴やアイデンティティを持った人間かというバイアスにとらわれず、客観的な数値で評価できるところが、このサービスの強みです。この6段階の分類では、もちろん「スター」が最重要顧客ということになります。しかし、「サイレント」層のメンバーが「スター」と比べて、本質的に劣っているというわけでもないのです。コミュニティマネージャー時代、私がずっとモヤモヤしていたことがありました。それは、サイレント層のメンバーは能力がないわけではなく、そもそも「コミュニティに所属している」という意識がないせいで、コミュニティに貢献していないだけであるように思えたことです。つまり、サイレント層は、ただ何も始まっていないだけであるケースが多いのです。条件さえ整えば、そしてきっかけさえあれば、ポテンシャルを発揮することができるようなサイレント・メンバーは、どんなコミュニティにも眠っています。そのことに、企業側も、そしてメンバー本人たちも、まだ気づいていません。KEENが目指していることのひとつは、こうしたサイレント層を巻き込み、コミュニティに新しい価値を生み出す人材になっていただくことです。しかし、「もっとコミットしてください!」と働きかけるだけでは、もちろんサイレント層を動員することはできません。そこで重要になるのが、コミュニティの可能性や成長を、もっと長い時間軸で捉えることだと、KEENは考えています。コミュニティ・ビルディングでは、「コネクティング・ドッツ」、「プランド・ハプンスタンス」といったキーワードがよく挙げられます。もちろんこれらは重要なのですが、やはりサイレント層には無縁なものに見えてしまうことが多いです。なぜなら、彼らは自分のことをコネクトされるドットだと認識していないからです。情報テクノロジーの進化によって、ドットの接続、つまり1対1のマッチングは容易になりました。そういったマッチングを最適化することが、もっとも手っ取り早く大きなビジネスが生むことは事実です。しかし、サイレント層を動員するには、もっと違ったアプローチが必要です。コミュニティの強みは、いろいろな動機で集まっている多様な人々をゆるく繋ぎ止めておけるところにあります。こうした空間においては、1対1のマッチングよりも、もっと偶然性の高い、けれども完全なセレンディピティでもない、そういった出会いこそが可能になるはずです。いわば偶然と必然のあいだで生じるケミストリーを期待できるのが、コミュニティという場の魅力なのです。コミュニティ概念をアップデートするためには、まずサイレント層に対する解像度を上げる必要があります。彼らをコミュニティの一員としてもっとクリアに認識し、そのポテンシャルを最大限に引き出すことが、人的リソースの確保という問題への対処法のひとつになってくるでしょう。これからのコミュニティ・ビルディングにおいて重要な視点は、サイレント層をふくむ誰もが、そこにゆるく帰属しつづけることができ、そこで時間をかけて誰もが徐々に自発的に変化し成長してゆける、そういった環境づくりへの投資です。コミュニティを、一種のアーキテクチャとして捉え直すこと。いまのコミュニティマネージャーに求められる仕事は、いわばエコシステムとしてのコミュニティづくりであり、そこで環境を整備しながら必要に応じて適切なコーチングを提供できるような能力が必要であるとKEENは考えています。コミュニティの外へこうしてコミュニティ内外への解像度が上がると、つぎに見えてくるのは、コミュニティの外にいる人たちです。KEEN Manager は、現時点ではコミュニティ内の分析にフォーカスしていますが、ゆくゆくは世の中に散らばっているあらゆる人々のスキルセットや才能の情報を集約することを目論んでいます。それらの情報を活用し、最適なコミュニティの立ち上げと運営の手助けをするようなテクノロジー。KEENは将来的に、コミュニティに新しく参入してくれる可能性があるタレントを、労働者としてではなくコミュニティの仲間として招き入れるための回路を構築したいと考えています。そのためにも、コミュニティの大幅なアップデートが必要です。コミュニティという誰もが知っている概念を、より空間的にも時間的にも拡張して再解釈すること。それが、人的リソースの確保・育成という課題の解決ための大きな一歩になるでしょう。おわりにここまで、KEENとしてどんな思想でコミュニティにまつわる事業に取り組んでいるのかの一部をご紹介しました。KEENは、コミュニティのデータ分析サービス「KEEN Manager」のほかにも、コミュニティの戦略策定・立ち上げのご支援を行うコンサルティングサービスをご提案しています。すこしでも興味を持ってくださった方はぜひ一度お話させてください。KEEN ManagerについてはこちらからKEENについてはこちらから%3Cscript%20charset%3D%22utf-8%22%20type%3D%22text%2Fjavascript%22%20src%3D%22%2F%2Fjs.hsforms.net%2Fforms%2Fembed%2Fv2.js%22%3E%3C%2Fscript%3E%0A%3Cscript%3E%0A%20%20hbspt.forms.create(%7B%0A%20%20%20%20region%3A%20%22na1%22%2C%0A%20%20%20%20portalId%3A%20%2223387243%22%2C%0A%20%20%20%20formId%3A%20%2200ba190b-2a62-4d0d-8688-012171c2df4f%22%0A%20%20%7D)%3B%0A%3C%2Fscript%3E%0A